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  • 2019年10月、尾下弁護士 (62期) によってCrossOver法律事務所が設立された。同事務所は昨今増えている大手法律事務所出身者による独立系事務所の一つ。CrossOverは他所と比べ何が違うのか。なぜ事務所を設立したのか、CrossOverだからできること、目指しているサービスの形、また、CrossOverで働くとはどういうことか等、様々な角度から話を聞いた。

    Just Legal (以下JL) : 尾下弁護士は大学卒業後、まずは公認会計士としてキャリアをスタートしています。大手監査法人で順調にキャリアを積んでいたように見えますが、社会人8年目にして弁護士となり、長島・大野・常松法律事務所(NO&T)に入所されています。キャリアチェンジをして弁護士になったのは何故でしょうか。

    尾下弁護士
    個人の能力で勝負をできるプロフェッショナル職に憧れていましたが、もともと数字を扱うことが好きだったこともあり、プロフェッショナル職の中から会計士の道を選びました。非常に面白い仕事ではありましたが、同じプロフェッショナルでも、独自性を持って依頼者の将来の打ち手を創造していける仕事の方が自分に向いているのではないかと考え、弁護士に転身することにしました。

    JL: 弁護士登録後NO&Tへ入所されますが、会計士として相応の実務経験を積んだ後に弁護士一年生としてキャリアをいわば再スタートすることに抵抗はなかったのでしょうか。

    私が一貫して追求しているのは「自分にしか提供できない独自の価値を提供する」ということです。会計士としてのベースがあり、さらにそこへ弁護士としての経験とスキルを身につけることでより独自のサービスが提供できるようになれると思っていたので、キャリアを再スタートという意識はなく、さらに良いプロフェッショナルサービスを提供できるようになるための新たな一歩と考えていました。

    JL: 尾下弁護士はNO&Tに計10年在籍されました。留学やNO&Tのニューヨークオフィスでの就労、国内での出向など様々な経験をされていますが、どのような考えを持ってこのようなキャリアをNO&Tで積まれたのですか。

    入所当時から、将来の夢として、経営陣に直接助言をする弁護士になりたいと思っていました。事業の一部分に関して法解釈を助言するというよりも、事業の全般に影響を及ぼす事項に関して、法解釈を超える助言ができるようになりたかったのです。NO&T東京でのM&A Lawyerとしての経験はこのような夢に向けての良いトレーニングになったと思いますし、米国においてリスクマネジメントについて勉強を重ねたのも有益でした。
    キャリアの転機を真剣に考えるようになったのは海外への留学を控えたタイミングです。もともと会計士としてのキャリアを大手監査法人のIPO支援部門で開始していましたが、東証の上場審査部門に弁護士が所属したことはかつてなかったと知り、会計士としてのキャリアも活かすことで、私が第一人者になれると感じました。IPO支援に必要な知識・経験は、大きく分ければ、上場企業の支援に共通する部分と、東証と主幹事証券の間だけで濃密な議論が交わされてきている独特の部分とがあるのですが、後者が弁護士にとっては完全に未開の地となっていたのです。私は常日頃から他の弁護士が一切やってないことで道を切り開きたい、と強く思っていたこともあり、ここで勝負をかけようと決めました。

    JL: 尾下弁護士はその後東京証券取引所の上場審査部に弁護士第一号として出向されます。会計士から弁護士になった時同様、目標がはっきりした時の決断力と行動力の高さが伺えます。

    実は出向が決まるまでは3年以上かかっています。様々な試みの結果ようやく上場審査部への道が開き、2017年から2年間経験を積みました。IPOに法律家が関わることの重要性は年々高まってきているので、上場審査部において初めての弁護士として関われたのは大きな意味がありました。また、上場審査において法律が取り上げられる時は、単に適法、違法の問題ではなく、内部管理体制の一環としての法令遵守体制の問題として取り上げられることが多いため、公認会計士として新興企業の内部管理体制の整備支援をしていた経験や、米国でリスクマネジメントについて勉強した経験がここで役に立ったのです。

    JL: 官公庁へ出向した弁護士が特定の法律の改正などに深く関わり、その後その法律のエキスパートとして元の事務所で活躍する話は頻繁に耳にします。何故上場企業サポートのエキスパートとしてNO&Tに残らず、自身の事務所設立の道を選んだのですか。

    NO&Tの同僚ともっと働きたいという思いから後ろ髪をひかれましたが、日本の未来を創っていく新興企業に対して、より自由に、独自のサービスを提供したいという思いを捨て切ることができず、事務所設立の道を選びました。日々、時代の変化の速さを強く感じており、一日でも早く自分の力でチャレンジしたいという気持ちが抑えきれませんでした。もちろん、2年間の出向を経て、法律家としてのIPO支援において自分にしか生み出せない価値を自分のやりたい方法で提供できる、という確信を持てたことも大きいです。実際にも、今は、東証、証券会社、VC、監査法人、IPOコンサルと多様な形で連携ができており、まさに自分が理想に描いた形で、最終的なターゲットである新興企業に独自の価値を提供できていると感じています。

    JL: 貴所のサービスを特徴づけるものとは何でしょうか。

    新興企業の戦略的な経営課題であるIPOとM&Aの法的助言を強みにしています。弁護士の助言は、究極的には、リスクマネジメントに他ならないと思うのです。そして、経営陣に対して、リスクマネジメントの観点から付加価値を提供しようとすれば、会社の事業の実態を掴み、全体像を定量的に俯瞰することが重要ですし、ソリューションは法解釈論に止まらず、リスクマネジメント上の様々な手法に及ぶはずです。このように考えるようになったのは、会計士としての経験、米国での経験、東証での上場審査の経験、東証でのインハウスロイヤーとしての経験からなのですが、このような発想を最大限に活かすことができるのが、IPOやM&Aの法的助言だと考えています。例えば、IPOの法的助言に関しては、私の助言は、法解釈論よりも、リスクマネジメントの観点からくる、内部統制等への助言の方が多いくらいかもしれませんし、M&Aの法的助言に関しても、リスクアプローチの発想を徹底するように心がけています。

    JL: リーガル・サービスを提供してはいても、そのサービスはビジネス全体を俯瞰的な視点から見たうえでのものである、ということでしょうか。

    そうですね。また、これはCrossOverという事務所名の由来でもあるのですが、法解釈論だけに固執しては良いサービスは提供できないという点も再度強調したいです。提供するのはあくまでもリーガル・サービスですが、「弁護士」という境界の枠に閉じ込められることなく、もっと広い視点で一人のビジネスプロフェッショナルとしてクライアントに最善と思われるアドバイスを提供することが重要だと考えています。岩竹弁護士は東証の上場部でインハウスロイヤーとして開示業務に携わった経験があり、江戸弁護士は6年間の検察官としての経験があるため、彼らとディスカッションを重ね、それぞれが異なる世界で得た知見をもとにすることで、ただの法解釈論を超える価値を提供できると考えています。

    JL: 所属されている岩竹弁護士、江戸弁護士からも事務所で働くことや、そもそもなぜスタートアップであるCrossOverへ入所を決断されたのか、どんなタイプの弁護士がCrossOverのカルチャーにフィットするのかなど聞いてみました。

    岩竹弁護士
    私がいた森・濱田松本は私にとっては憧れの事務所で、ロー・スクール時代はもとより修習生の時もかなり努力して、やっと入所できた事務所でした。自分の可能性を広げるには最適な環境だろうと思って入所したので、もし次のステップを所外に求めるなら様々な選択肢から柔軟に考えようと思っていました。大手事務所に所属している弁護士の中には、転職するなら他の大手事務所もしくは外資系トップ事務所しか考えない、という方もいると思いますが、個人的にはそういったこだわりは特になかったです。もともとレールに乗ることに強いこだわりはない性格なので、そういったところもCrossOverへの移籍を後押ししたのだと思います。

    尾下弁護士
    私は岩竹弁護士をずっと誘っていましたが(筆者注:岩竹弁護士は尾下弁護士の一年あとに東証上場部に出向しており、2人はいわば同じ職場の先輩・後輩の関係)、「岩竹さん来てくれるかも」と思ったのは、彼がエリート街道まっしぐらで森・濱田松本に入ったけれども、森・濱田松本に所属していること自体にアイデンティティを感じているわけではなく、むしろ自分らしい、自由な生き方、在り方を望んでいると知ったときでしたね。

    岩竹弁護士
    ほんと、何度も口説かれました(笑)

    JL: 岩竹弁護士は今年1月に入所されていますが、これまでの印象はいかがですか。

    岩竹弁護士
    とにかくディスカッションが好きなチームですね(笑)。我々のお客様はこれまで存在しなかった論点に直面していたり、目新しいビジネスをしている会社様が多いです。そのような状況では、答えがない問題、文献を調べても何も書かれていない問題に日々直面します。そんな時チーム全員で頭を使って議論して進めていくしかないのですが、その議論が楽しいですね。相手の意見を聞いて「ああ、なるほど、これは確かに相手の言うことのほうがいいな」と素直に思えるとか、そういった素質は弊所では重要だと思います。新しく出てくるアイデアが楽しいとか、議論を楽しめる人だと弊所は向いていると思います。知的好奇心が旺盛だと良いですね。

    尾下弁護士
    そうですね。多少性格がエキセントリックでも(笑)、知的好奇心が旺盛で新しいことを楽しめて学ぶことに貪欲であれば弊所ではフィットすると思いますね。

    JL: 他にはどんなところが印象的ですか。

    岩竹弁護士
    弊所は相談を受けた個々の法的論点だけではなく、クライアント企業様の企業価値全体を考えた上でのリーガル・サービスを提供しています。会社様の置かれている状況や遡上に上がっている論点全てをきちんと理解し、その上で、企業価値との関係で優先的に対応すべき課題が何かを整理した上で依頼者へアドバイスしています。これは企業法務の中でもいわば応用編のところをやっていると思います。

    JL: 江戸弁護士は元検察官というご経歴ですが、どういった経緯で検事を退官されCross Overへ入所されたのですか。

    江戸弁護士
    検察官の仕事は、基本的に、刑事事件という社会的にマイナスの事象が発生したときに、適切な処理をしていくという仕事です。もともと検察官になりたかったので、捜査や公判活動には大きなやりがいがありました。ただ、年次が上がるにつれて、仕事に対する考え方に少しずつ変化が出てきました。具体的には、マイナスが発生したときに対応するだけでなく、プラスを生んでいくところに携わりたいという思いが生まれたことです。弁護士の業務で言えば、例えば不祥事事件などの社会的なマイナスが発生した場合であっても、再発防止策の提言など、前向きな価値を提供しうるところに魅力を感じるようになりました。一旦転職の気持ちが決まったら急転直下で話がまとまった感はありました。2019年10月の上旬、尾下弁護士が事務所を開設してから10日程の段階で、知人経由で尾下弁護士とお話する機会があり、お会いして設立の経緯や今後のビジネスプランをお聞きする中で、枠にとらわれず柔軟に価値を提供するという考えに惹かれ、是非お仕事をご一緒したいと思うようになりました。

    JL: 入った印象はいかがですか?

    私は依頼者という存在がいない職種から転職しましたので、依頼者がいる仕事における働き方には色々なカルチャーショックもありました。しかし、枠を超えていろんなバックボーンを持った方を歓迎するというスタンスを持っている事務所ですので、素朴な疑問も気兼ねなく聞けますし、議論を重ねることで自身の成長を実感し、充実した日々を過ごすことができています。今後も依頼者にとって価値のあるサービスを提供し続けたいと考えています。

    尾下弁護士
    江戸弁護士のように新しい価値を生み出すことに関心があり、且つ光るキャリアをお持ちの方とは是非一緒に事務所を創っていきたいですね。近時、IPO準備の過程でも不正対応が重要になることが増えてきました。江戸弁護士は渉外事務所出身ではないのですが、検察官として6年キャリアをお持ちで、法律周りの基礎力はしっかりしています。やはり彼女がいて大きいのは、私と岩竹弁護士が持っていない視点を持っていることです。我々が見落としてしまうようなところを彼女はしっかりピックアップできており助かっております。

    JL: 開設から半年強が経過しておりますが、現状はいかがでしょうか。

    尾下弁護士
    独立する直前までは規制機関である東証にいたため、営業活動をしていないどころか、独立することもほとんど公にしていませんでした。そのため、独立日の依頼者は2社でスタートしましたが、今のところ、想い描いていたシナリオ通りに順調に進んでいます。メインの助言先は、上場、非上場の新興企業なのですが、特徴的なのは証券会社、IPOコンサル、監査法人、VCというIPO業界のハブの顧問を多数抱えていることです。

    JL: 5年後のビジョンはありますか。

    事務所の規模や人数の目標はあまり考えていないですが、新興企業支援において独自の地位とブランドを高めていきたいと考えています。ビジネスを拡大しつつ、市場において他にはない唯一無二の”One and Only”な存在であり続けたいです。そのために、他では誰もやっていない誰もできないことを私達が引き続きやっていくことで、新しい価値の提供を拡大していこうと強く思っています。IPOコンサルではなくあくまで法律家としてですが、視点や考え方は枠に囚われず、且つ大手事務所と同様のクオリティを最低ラインとして今後も新しい価値・サービスを提供していきます。また、それを一緒に作っていけるメンバーだけを集めてやっていきたいですね。

    JL: 先生方、この度は貴重なお話をありがとうございました。


    尾下大介代表弁護士
    早稲田大学大学院法務研究科卒業、デューク大学ロースクール修士課程修了。公認会計士。2009年弁護士登録。2015年ニューヨーク州弁護士登録。監査法人、会計事務所、長島・大野・常松法律事務所を経て東京証券取引所へは弁護士第一号として出向。2019年10月にCrossOver法律事務所設立。

    岩竹惇志弁護士
    京都大学法科大学院卒業。2016年弁護士登録。森・濱田松本法律事務所、東京証券取引所への出向を経て2020年1月にCrossOver法律事務所へ移籍。

    江戸まりん弁護士
    北海道大学法科大学院卒業。2013年司法修習終了、検事に。2020年1月にCrossOver法律事務所へ入所、弁護士へ転身。

    Posted by 

    吉政 優奈

    法務インハウス、法律事務所

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